「お金はあるのに赤字?」の謎を解く。【経営者向け】発生主義と現金主義の決定的な違い
「通帳にはお金があるのに、試算表を見ると赤字になっている」
あるいは逆に、「お金は全然ないのに、なぜか黒字で税金が高そうだ」
経営者の皆様、このような不思議な現象に直面したことはありませんか?
この「直感(現金の動き)」と「会計上の数字(利益)」のズレ。実はこれこそが、経営者が会計を難しく感じる最大の原因です。
このズレを生んでいる正体が、「発生主義」という会計独自のルールです。
今回は、経営判断に不可欠なこのルールについて、専門用語をなるべく使わずに解説します。
現金主義 vs 発生主義:決定的な違いとは?
私たちの日常生活(家計簿)と、会社の会計では、お金を記録する「タイミング」が根本的に異なります。
家計簿の感覚=「現金主義」
「現金を受け取った時」に収入とし、「現金を支払った時」に支出とする方法です。
通帳の動きと一致するため非常に分かりやすいですが、ビジネスの「成績」を正しく表せないという欠点があります。
会社のルール=「発生主義」
現金の動きに関係なく、「取引という事実が発生した時」に売上や経費を計上する方法です。
なぜ発生主義が必要なのか?
例えば、クレジットカードで高額な備品を買ったとします。モノは今月から使って売上に貢献しているのに、引き落とし(現金支出)は翌月です。
経営判断においては、「今月使った経費」として認識しないと、今月の正しい利益が計算できません。この「行動と数字のタイミングを合わせる」ために発生主義が存在します。
「お金が動いていない」のに計上する4つの勘定科目
発生主義会計では、まだ現金が動いていなくても、「権利」や「義務」が発生した時点で帳簿につけます。
ここで登場するのが、経営者を悩ませる4つの代表的な勘定科目です。
これらは全て「後でお金をもらう権利」や「後でお金を支払う義務」を表しています。
1. 売上に関するもの(入金はまだだけど、売上)
- 売掛金(うりかけきん):
本業の取引(商品販売やサービス提供)を行い、請求書は出したけれど、まだ入金されていないもの。
例:今月納品したWeb制作費(入金は来月末)。 - 未収入金(みしゅうにゅうきん):
本業「以外」の取引で、まだ入金されていないもの。
例:会社の古いパソコンを売却した代金(入金は来週)。
2. 経費に関するもの(支払いはまだだけど、経費)
- 買掛金(かいかけきん):
本業の仕入れを行い、モノは受け取ったけれど、まだ代金を支払っていないもの。
例:仕入れた材料費(支払いは来月末)。 - 未払金(みばらいきん):
本業「以外」の経費や備品購入で、まだ代金を支払っていないもの。
例:クレジットカードで購入した事務用品代、来月引き落としの水道光熱費。
【経営上のポイント】
これらを計上することで、「通帳からはまだお金が減っていないけれど、会計上はすでに『経費』として利益を減らしている」という状態が生まれます。これが「お金はあるのに赤字(またはその逆)」の原因の一つです。
しかし、これらを正しく計上するからこそ、「今月、会社が本当に生み出した利益(実力値)」が見えてくるのです。
意外と知らない「減価償却費」。年一括計上だと月次の利益が見えなくなります
もう一つ、お金の動きとズレる代表的な経費が「減価償却費(げんかしょうきゃくひ)」です。
建物や車、高額な機械などを購入した際、購入時に全額を経費にせず、数年にわたって少しずつ経費にしていくルールのことです。
よくあるケース:決算時に「年一回」まとめて計上
特に個人事業主や小規模法人の場合、日々の記帳の手間を省くため、確定申告(決算)のタイミングで、1年分をまとめて計上するケースがよくあります。
税務署への申告(税金の計算)という点では、この方法でも全く問題ありません。
しかし、「経営管理(正しい利益の把握)」という点では、大きなデメリットがあります。
年一括計上のデメリット
例えば、年間60万円の減価償却費がかかる車を持っているとします。これを年末に一括計上するとどうなるでしょうか?
- 1月〜11月の試算表: 減価償却費(経費)がゼロなので、実際よりも「利益が出すぎている」ように見えてしまう。
- 12月(決算月)の試算表: 突然60万円の経費が計上され、急に利益が減る(または赤字になる)。
これでは、「今月は黒字だと思っていたのに、決算を締めてみたら実は赤字だった」という事態になりかねません。
減価償却費は実際にお金が出ていくわけではありませんが、「毎月の正しい損益」を確認するためには、このズレは致命的です。
解決策:毎月計上(月割)にする
ZEST Advisoryでは、たとえ個人事業主の方であっても、減価償却費を「毎月計上(月割)」することを強く推奨しています。
先ほどの例なら、毎月5万円ずつ経費として計上します。
そうすることで、毎月の試算表が「正しい実力」を示し、年間を通してブレのない経営判断が可能になります。
「見えないお金」を管理して、未来を予測する
「売掛金」「買掛金」「減価償却費」……。
これらは通帳を見ているだけでは決して見えてこない数字です。
しかし、この「見えない数字」を可視化することこそが、どんぶり勘定を卒業し、資金繰りの不安をなくす唯一の方法です。
とはいえ、忙しい経営者の皆様が、毎月これらを細かく計算し、仕訳を切るのは大変な労力です。
ZEST Advisoryの理念は「経営者を本業に専念させる」ことです。
当事務所の「経理体制構築サポート」については、こちらのサービス内容ページもご覧ください。
複雑な会計処理を「仕組み化」したい経営者の皆様へ
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