売上の計上タイミング、いつが正解?【実務家が解説】経営判断を誤らない「発生主義」の仕組み化
「売上の計上タイミング」について、悩まれたことはありませんか? 私はこれまで多くの経営者から、「入金された日か、請求書を発行した日か、いつを『売上』とすれば良いのか」というご相談を受けてきました。
特にスタートアップや中小企業では、経理担当者がいない(または経営者が兼任している)ため、日々の売上管理が後回しになりがちです。
その状態を放置すると、経営判断が遅れるリスクがあります
もし皆様が、「銀行口座に入金された日」を基準に売上を集計している(=現金主義)場合、注意が必要です。その方法では、正確な財務状況の把握が遅れます。
例えば、4月は必死に働いて多くのサービスを提供したにもかかわらず、取引先の締支払の関係で入金がすべて2ヶ月後の6月だったとします。 「現金主義」では、4月の売上はゼロに見えてしまいます。これでは「4月は本当に儲かっているのか」「この事業は順調なのか」という最も重要な経営判断が、最大で2ヶ月も遅れてしまうのです。
これでは、適切な資金繰りの予測や、次の戦略(広告投資や採用など)を立てる機会を逃す原因にもなりかねません。
解決の鍵は『発生主義』での管理です
この問題を解決するには、会計の基本ルールである『発生主義』で管理する仕組みを構築することが不可欠です。
Q. 「発生主義」とは何ですか?
A. 「発生主義」とは、現金の入金日ではなく、商品やサービスを提供した(=売上が発生した)タイミングで売上を計上するという、会計上の大原則です。
具体例:* 4月10日にサービスを提供し、請求書を発行した。* 入金日は、取引先の締めの関係で6月30日だった。* 【発生主義】: 4月10日(サービス提供日)に「4月」の売上として計上します。* 【現金主義】: 6月30日(入金日)に「6月」の売上として計上します。
私が税理士法人時代に担当していた上場企業はもちろん、会社の規模の大小を問わず、これは「自社の正しい成績(業績)」を把握するために会計上守るべき最も重要なルールです。
Q. なぜ「発生主義」が経営に不可欠なのですか?
A. それは、「いつ働いた(稼いだ)分か」と「いつ入金されるか(回収したか)」を分けて管理できるようになるからです。
実務上の「売上計上」の効率的な管理方法
Q. 毎日記帳しないといけないのですか?
A. いいえ、その必要はありません
日々のサービス提供や納品の「都度」、会計ソフトに入力(記帳)するのは現実的ではありません。 実務上は、多くの会社が「月末」に「一括」して、その月の売上をまとめて会計ソフトに入力(記帳)しています。
重要なのは、「どのサービスがいつ提供されたか」という事実(日々のデータ)を、システムやエクセルなどで正確に管理しておくことです。
Q. 業態によって、管理方法は違いますか?
A. はい、業態によって最も効率的な管理方法が異なります。皆様の事業がどちらに近いか、ご確認ください。
パターン1:単発の取引(商品販売、Web制作、都度コンサルなど)
商品やサービスを「納品」または「提供完了」した時点で売上が発生する取引です。
管理方法:
- 原則通り、「納品日」や「サービス完了日」が売上計上日となります。
- これらの取引を、エクセルや販売管理システムで「日別」にリストアップしておきます。
- 会計ソフトへの入力: 月末に、そのリスト(例:4月1日〜4月30日納品分)を合計し、「4月分売上」として一括で入力します。
この方法が、会計ルール(発生主義)を守りつつ、最も効率的な実務処理です。
パターン2:月額サービス(サブスク、保守契約、顧問契約など)
毎月定額でサービスを提供し、対価を受け取る取引です。
管理方法:
- この場合、1ヶ月間(例:4月1日〜4月30日)にわたってサービスを提供しているため、厳密な日割計算は非常に煩雑です。
- 実務上の処理: 経理の効率化のため、「月末最終日(例:4月30日)」付で、当月分の売上を計上するのが一般的です。
この方法であれば、毎月決まった処理(例:月末に月額売上をまとめて計上)を行うだけでよいため、管理が非常に簡単になります。
Q. エクセル管理の限界は?
A. 取引件数が少ないうちは、エクセル管理で十分です。
日々の売上(パターン1)や月額売上(パターン2)をエクセルで管理し、月末に合計額を会計ソフトに一括入力する方法でも、発生主義の会計ルールとして全く問題ありません。
しかし、取引件数が多くなり、エクセルでの集計や入力作業が負担になってきたら、それは「仕組み化」を見直すサインです。 その場合は、クラウド会計(freee, MFなど)と請求書発行ソフトや販売管理システムを連携させ、データを自動で取り込む「仕組み化」へ移行するのが最も効率的です。
経理の悩みから解放され、本業に専念するために
このように、「発生主義」という会計上のルールを守りつつ、自社の業態(単発か月額か)や取引件数に応じて、最も効率的な管理方法(エクセルかクラウドか)を選定し、構築することが「経理の仕組み化」です。
とはいえ、経営者の皆様がご自身でこの判断と仕組み化を行うのは、非常に時間がかかる作業です。
ZEST Advisoryの理念は「経営者を本業に専念させる」ことです。
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